(私は知っている、自分の記憶が無くなるのがどれだけ不安なのか、何も分からない所に放り込まれて、一人ぼっちで……かつて私もそうだったからその孤独は良く知っている)

(それが、私のかけがえのない人に起こってしまった…何故こんなにも残酷な事が起きてしまうのか?私達は何をしたのか?どうして彼だけがこんな目に遭うのか?)

(取り敢えず彼に会いに行こう、会って……少しでもその不安を解してあげなければ、貴方は一人じゃない。私達がいるって伝えないと…)




(そう、思っていた)


(まさか、そんな不安も分からない程記憶を失っていたなんて、思いもよらなかった。
いえ、本来なら記憶喪失とはそういうモノなのかもしれない。私が特別だっただけで……)

(お医者様が言うには、エピソード記憶は全て消えており、意味記憶も殆ど消えているから赤ん坊とほぼほぼ変わりは無いらしい)

(幸い言葉が通じないとか、そういうレベルでは無いけれど…少なくとも一般教養は殆ど覚えていない、そういう次元らしい)

(少なくとも、自分の手には負えないしこの四国でもここまで重い症状の記憶喪失は初めてだと…前例が無いと言われた)

(全国に渡り探せば、腕の良い医者がいる筈だとは言っていたから、今はそのっちと若葉さんが必死になって医者を探している…本当はついて行きたいけれど、私達にも私達の生活があるし、何より一部神世紀の人達が西暦に来ている関係、先ずは根回しが必要だとそのっちは言っていた)

(つまり、私達はまた離れ離れになってしまう……嫌だ。折角会えたのに…)

(私はあの時記憶を失っていたから気が付かなかったけど貴方はずっと覚えていた、私の事を)

(でも、貴方はそんな素振りは見せないで、私に寄り添ってくれた優しい貴方…大丈夫。私は記憶を取り戻す事が出来たから、貴方も取り戻す事が出来るわ)

(貴方が記憶を取り戻すまで、私は貴方を想っている…)

永遠に

美森記憶喪失