名前:ジェイド・リーチ

海底50万マイル

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(オンボロ寮へ戻る道中で雨に降られてしまった……仕方ないので近くにあった建物の軒先に逃げ込んで、雨が止むのを待つことにした。
 それからじっと待つこと数分、雨が止む気配は無くて困っていたら、傘をさしている人が目の前で足を止めてこちらの名前を呼んだ。聞き覚えのある声に目線を持ち上げると、そこに居たのはアズールだった)

……こんにちは、監督生さん。
もしかして誰かと待ち合わせ……なわけありませんね。
雨宿りですか?
残念なことに今日はこのまま降りっぱなしだそうですよ。
夜中にかけて雨足が強まるばかりで止むのは明日の朝だと聞きましたが。
あなたさえ嫌でなければ寮まで送りましょうか。
生憎と傘はこの一本しかありませんが、それでも良ければ。
…………どなたかに迎えを頼んでいるとか、嫌だと言うなら断ってくださって構いませんが。
(そう言うと、アズールは少しだけ傘を傾けた。
 迎えは頼めていないし、渡りに船だ……と思ったけど、寮まで送ってもらった場合、何を対価に差し出せば釣り合いが取れるだろうかと思案する。すると、それを察したらしいアズールがため息をついた)

こんなことでいちいち対価を取ったりなんてしませんよ。
あなた、僕のことを何だと思ってるんですか……。
……で?どうします?
信用ならないと言うならそれもいいですけど。
(そう言うアズールの向こう側に広がる雲はどんよりとしていて、一晩中降るというのは間違いなさそうだ……少し考えてから、傘に入れてもらえるならとお願いをすると、アズールは少しだけ目を細めた)

素直で結構。……どうぞ。
(……というわけで、オンボロ寮までアズールの傘に入れてもらった。道中、他愛ないことを話しながら歩いたためか、思ったよりも道程が短く思えた。
 こちらが濡れないように気を遣っているのか傘が傾いていて、玄関に着いた頃にはアズールの肩が濡れているのが見えた。けれど、それを言うよりも早くアズールが「早くシャワーを浴びるなりして身体を冷やさないように。風邪を引きますよ。それでは」と口早に言って、踵を返してさっさと戻って行ってしまった……)