名前:ジェイド・リーチ

海底50万マイル

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 アラームが鳴っている。
 起きて支度をしないと……と思い、身体を起こす。一緒に寝ている親分のことも起こさないと、と手を動かすけど、いつも傍で丸まっている温もりが無い。
 もしかして珍しく先に起きたのかな。そういう日もあるかもしれない。
 ぐっと背伸びをしてからベッドを降りる。
 …………?
 見慣れた景色じゃない。……いや、見慣れた部屋ではある。あるけど、ここは、いつものオンボロ寮の部屋とは違う〝自分の部屋〟だ。

 もしかして、と窓の傍に寄って、カーテンと窓を開ける。向こうに見えるのはツイステッドワンダーランドの、ナイトレイブンカレッジの景色じゃない。

 いつも朝に声を掛けてくれるゴーストも居ない。
 ここにはきっと、魔法なんて存在しない。
 魔法も、獣人も、妖精も、──人魚も。



 外から流れ込む風は薄らと冷たくて、頬と耳元を撫でて通り過ぎていく。



 ──────あれ。




 ……何を考えていたんだっけ。





 「〝監督生〟さん」
 誰かの呼ぶ声がしたような気がする。けど、誰だろう。聞き覚えの無い声……なのに、妙に耳に馴染む。







 ちゃり、と何かが擦れるような音がする。
 「〝監督生〟さん」
 微かに波の音がして、鼻の先を潮の匂いが混じった風が通り抜けていく。








 ────だれ?







「──子分!!