…………他人の幸福を願えるだなんて、監督生さんはまるで海の魔女のように慈悲深く、博愛精神に溢れてらっしゃる。
しかし、……僕にとっての幸せが、あなたにとっての不幸を招くかもしれませんよ。
例えば……そう。
あなたの脚を奪って海の底へ連れ帰ることこそが僕の幸せなんです、と言ったら、あなたは叶えてくださいますか?
……ふふ。冗談ですよ。
あなたの考え方を否定するわけじゃありませんが、まずはご自分の幸せを優先なさったほうがいいかと。
その小さな手に抱えられるものはそう多くはないでしょう。
ちゃんと優先順位をつけないといけませんよ。
(にこ、と笑ったジェイドは、自身の帽子のブリムを静かに下げた。……影が落ちたせいでどんな顔をしているのかわからなくなってしまった……)