(モストロ・ラウンジが外部に向けて開放された日、ラウンジ内は随分と賑わっていた。忙しなく行き来する寮生達に混じって給仕をしているジェイドが、ある席に食事を配膳した時、そこに座っていた女性客がジェイドの寮服の袖を掴んだ。それから「あの、ジェイドくんって彼女居ますか?」と言い出した)
……申し訳ございません。
個人的なやり取りはしないようにと支配人からきつく言いつけられています。
お客様のご期待には添えないかと……。
(ジェイドは女性客の手をやんわりと解いて事務的な文言で断っているが、相手はなおも食い下がって「お友達から」だとか「連絡先だけでも」と言い募り、恐らくはその連絡先が書いてあるのだろう紙を強引にジェイドのジャケットのポケットにねじ込んで「ずっと好きだったんです!」とまで言い出した)
え、あの、困ります……。
再三言いますが個人的なやり取りは──。
(……困った様子のジェイドを見兼ねてなのか、ふとフロイドが寄ってきて、空のお皿が乗ったトレンチをジェイドに押し付けた)
油売ってんなよ、ジェイド。ハイこれ下げて。
……申し訳ございませんお客様ぁ。
オレ達、今のんびりお話してる暇無いんで。(それじゃ、と言って、フロイドはジェイドのことを押しやって立ち去った。残された女性客は残念そうにしている……
)