(中庭で不意に呼び止められて、よく知らない人だなと思っていたら、彼は半分に折ったメモ用紙をこちらに握らせてきて「前から君のこと可愛いなって思ってて……その、好きなんだ。でも、いきなりどうこうしたいなんて言わない。友達から……良かったら、連絡して」と言った。
少し吃りながら、目元を赤くした彼はこちらが何かを言うよりも早く「それじゃ」と言って走り去って行ってしまった……。
手元に視線を落とすと、タイミング良く聞き慣れた声で「おやおや」と言うのが聞こえた)
何もあんなに慌てて行くことないのに。ねえ?
……こんにちは、監督生さん。
念の為に言っておきますが、決して盗み聞きをしていたわけじゃありませんよ。
そこを通ろうと思ったら突然、彼があなたに想いを告げ始めたので、空気を読んで身を隠していたんです。
……彼、オクタヴィネルの生徒ですね。
あなたにはやはり、人魚を惹き付ける何かがあるんでしょうか。
先に仲良くなったのは僕なのに、何だか妬けてしまいます……なんて。
そろそろ予鈴が鳴りますよ。
急いだほうがいいのでは?
(ジェイドはそっとこちらの背を押して進むように促してきた……
)