名前:ジェイド・リーチ

海底50万マイル

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最近さあ、ハナダイくんみてえにすげえ写真撮るんだよね。
まあ、山行った時の写真も撮ってるみてえだけど……ジェイドのスマホのカメラロールの中、結構な頻度で小エビちゃん写ってんだよね。
……何でかわかる?わかんない?
小エビちゃんがいつか帰るかもしんないから、出来るだけ残しときたいんだって。
小エビちゃん本人を置いとくわけにはいかねーじゃん?
ジェイドさあ、多分ね、もっと前なら小エビちゃんが泣いて喚いても帰さないって言ったと思うんだよね。
海の底で気に入って集めてたアクセサリーと一緒で、大事に箱の中に詰め込んで鍵でもかけちゃえばいいじゃんって。
……でも、そうじゃなくなっちゃったんだって。
小エビちゃんのこのカワイイ顔が見れなくなるのも、お喋り出来なくなるのも嫌だけど、……泣かせたり、嫌われるのはもっと嫌だって。
だから帰りたいって思うなら帰してあげたいと思ってんの。

……小エビちゃんがさ、ホームシックになったり、帰りたいって思うのはまあ、当たり前のことでしょ。
オレらだって〝そりゃそうだよな〟って思うよ。思うけど、でも異世界のことなんてなーんもわかんねえからね。
出来ることなんて何も無いわけ。
……形だけ、表面上だけの慰めぐらいならいくらでもしてあげられるけど、そんな安っぽいもん出されたってヤでしょ。
あれはあれでジェイドなりの誠意っつーか……。
ほら、小エビちゃんの故郷って、家族とか、友達とか?
それ以外にもまあ色々置いてきたもんがあるよね。
多分、たくさん。
それ全部をさあ、こっちのわがままで捨てさせんの、ジェイドには出来ないんでしょ。
何でって、そりゃ、小エビちゃんのこと好きだからじゃん。
好きで、ジェイドなりに小エビちゃんが一番幸せに笑ってくれんのはって考えた結果があれでしょ。
……あ、これ言わねえほうが良かったかな。
でももうバレバレだしいいでしょ。

ジェイドにここまでさせんの、多分後にも先にも小エビちゃんぐらいじゃねーかなあ。
将来とか、小エビちゃん以外じゃヤダ!とか言って独身貫いてそうだもんな。
あいつの片割れのオレが言うんだから間違いねーよ。
……ふふ。魔法なんて使えなくても十分厄介な子だよねえ、小エビちゃんて。
でも、小エビちゃんが気に病むことなんて何も無いよ。
何回も言うけど、オレらのモットーは自己責任だから。
今までの考え方とか価値観が変わるくらい好きになっても、引き返せないようなことをしても、その想いが泡になっても、全部自己責任。
小エビちゃんは何にも悪くねえよ。
……なーんて。この言い方は意地悪だった?

……オレ?オレはねえ、どうだろ。
残れって無理強いはしねーけど、別に帰れとも言わねえよ。
こうやって一緒に居んのは楽しいし、おもしれーし、居ればいいのにって思ってんのはほんとだけど。

ま、でも、結局どうするか、どうしたいかは小エビちゃん次第っていうか……その〝いつか〟が来るまでにちゃんと考えときなよ。
……後悔しないようにね?