俺に?ありがとう、大切に食べるよ。
……その、一つだけ確認しておきたいんだが、これって特別なやつか?
いや、俺の勘違いならそれでいいんだ。
けど、特別だって言うなら受け取ってありがとうだけってわけにはいかないだろ。
……この辺ではバレンタインは男からって感じだけどさ、俺がもう少し子供の頃、積極的な女の子は普通に好きな相手に自分からプレゼントを渡したりしてたよ。
なあ、監督生。
どっちなのか確認させてくれ。……これ、どう受け取ったらいい?
(トレイはこちらが差し出したチョコを手にしたまま、ゆっくり身をかがめて、まるで内緒話でもするみたいに声を潜めて話す。
正直に本命……特別なものだと言うと、トレイは短く「そうか」と呟いて目を細めた)
……なら、誰にも見つからないようにしないとだな。
ほら、お前は人気者だから。監督生からの特別を欲しがってるやつは多分たくさん居るだろ。
俺もそのうちの一人だったんだが……はは、まさか貰えるなんてな。
…………その、もっと上手いセリフでも思いつけば良かったんだが……やっぱり、咄嗟には出てこないもんだな。
(眉尻を下げて笑うトレイは、初めにそうしたのと同じようにかがめていた背をゆっくりと起こして、細く息を吐いた。……よく見ると目元がほんのりと色付いている)
……あんまりじっと見ないでくれ。
緊張してるんだ。
気になってた子から特別なチョコレートを貰ったら、そりゃあ、なあ。するだろ、普通。
……明日、お前の寮に行っていいか?
お返しをしないとだろ。……そうだな、マロングラッセなんかいいと思うんだが、栗は嫌いじゃないか?