どうした、仔犬。
もうじき日が落ちて一気に冷え込むぞ。
なるべく早く寮に……。
(寮に戻るように促すクルーウェルにラッピングした包みを差し出すと、クルーウェルはぴくりと片眉を跳ね上げた。バレンタインの贈り物であることを伝えれば小さく「なるほどな」という呟きが返ってくる)
……生徒から教師への個人的な贈答品は基本的に好ましくないとされている。
非常に不適切だ。この学園のバッドボーイどもと来たら、やれ成績を何とかしろだの、テストの採点を甘くしろだのと言って気まぐれにじゃれついてくるからな……まったく頭の痛い話だ。
……が、しかし、俺はちょうど今仕事を終えた帰りだ。
教師としてではなく、デイヴィス・クルーウェル個人として受け取っていいならありがたく貰おう。
宛先は間違えていないな?
これは……見たところ、お前が手ずから作ったようだな。
(中身はラムレーズンを使ったトリュフだと添えると、クルーウェルは僅かに目を細めた)
はは、そうか。俺の好みに合わせて作ったのか。……随分といじらしいことをする。
……レディーが心を尽くしたものを無下にするほど冷たい男のつもりはないが……しかし、仔犬。返礼にはあまり期待をするなよ。
俺がお前にやれるものは躾と、……まあ、美味い菓子と紅茶の一杯くらいだ。
お利口さんで待てるか?
……ふ。お前には愚問だったかもしれんな。
ありがとう、監督生。
(いつもは鋭い目尻を少し緩めたクルーウェルは、手のひらをこちらの頭に乗せるとくしゃくしゃと軽く撫でてきた。声はいつもよりうんと穏やかだ……)