名前:ジェイド・リーチ

海底50万マイル

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また小エビちゃんの写真撮ってたわけ?
どうせなら動画撮ればいいじゃん。
そのほうが声も残せんじゃねえの?


……そうですね。
そのほうが彼女の多くを僕の手元に置いておけるでしょう。
でも、いいんです。
…………人は、最初に声を忘れるのだと聞きました。
少しずつ、一つ一つ忘れていって、最後に残るのは匂いの記憶だとか。
僕達人魚にもそれが当てはまるのかはわかりませんが……少なくとも、帰った後、彼女はきっと僕の声を忘れてしまうでしょう。
ですから、…………いいんです。これで。
……お互い様ってやつですよ。

ふーん……あ、そお。
……どうせ一生忘れられないくせに。


………………。
あまり意地悪を言わないで。
わかってます。こんなのは僕の身勝手なエゴ、自己満足なんだってことくらい。

 指先で画面をなぞって、幾つもの写真をロックされたフォルダへ移動させる。それからお気に入りに登録して、しばらく眺めた後に画面を閉じた。
 何枚もの写真として切り取った風景の中には笑顔の彼女が写っている。
 ──小さくて、可愛い、僕が恋をしている、たったひとりのひとだ。