(許可が出たので屋上に上がってみる)
(…もちろん監視付き、それも複数人)
(それでも、久しぶりに外の空気が吸うと心がすっとする)
(ちゃんと生きているーーそれを実感するようにゆっくりと深呼吸した)
…落ち着いたか?
(ふいに声のした方を見ると、彼が立っていた)
(コンクリートでできた段差の上に立ち、じっとどこかを見ていた)
(全て諦めたような虚ろな目をして)
(その姿がとても不安定で、コンクリートと空の境目に今にも溶けていってしまいそうで、)
(思わず駆け出しその手を掴んでいた)

(後ろから監視の人の焦ったような声が聞こえたが構わず、危ないよ、と彼の手を引く)
……別に飛び降りたりしねぇよ。
…帰るぞ。
(その言葉は本心だろうかーー)
(彼はトン、とこちら側に降りてきてそのまま私の手を引いて歩き出す)
(先を歩く彼の背中を見ながら、どこか懐かしいような既視感を覚えた)
(胸がザワつくのを隠すように、彼の手をぎゅっと握り直した)