うん…僕はそのまま近付いて見たんだ。
綾波が眼鏡を掛けていないのは知ってたし、女性の使う眼鏡には見えなかったからね
ちょうどそう…
父さんが使っているような、少し古い眼鏡だったよ。
よく見ると眼鏡にはヒビが入ってて、どうしてこんなものが綾波の部屋に置かれているのか…尚の事疑問に思った。
でも…その時だった。
綾波の物では決して無い、男の声が聞こえたのは…
ジ…シン…ジ…最初はテレビかラジオの音かと思ったよ…
でも部屋に入った時にそういった物が一切置かれていない事は把握してたからね。
近所に人は住んでないし…綾波が誰かと同居してるって言う話も聞いてなかった。
…じゃあ、誰が僕の名前を呼んでいるんだ?
ジ…シン…ジ…眼鏡だ…それしか思い浮かぶ答えは無かった。
…馬鹿らしい話だとは思うよ、でも、そうとしか考えられないじゃないか。
真実を確かめる為に、僕は恐る恐る眼鏡を手に取ろうとした。
何をしてるの?
振り返ると、そこには綾波が居て…僕を見ていた。
血のように赤い目で…
彼女はシャワーを浴びていたようで、水色の髪の毛はまだ若干濡れていた
もしかしたらまだ服も着てなかったのかもしれない…だけど、そんな事を見る余裕なんか無かったよ。
………。彼女は何も言わずに僕に近付いてきた…そして細くて白い腕を伸ばして…
その後の事はよく覚えてないよ…
気が付いたら僕は自分の家に帰っていた
尋常じゃない様子で帰って来た僕を見て、ペンペンとミサトさんが酷く心配してくれたよ…
…結局、あの時聞いた声の正体は分からない。
あれは僕の空耳だったのかもしれないし…そう思いたいけど…。
…とにかく、僕の話はこれで終わりだよ。
シン…ジ…