(私は蘭に連れられて服屋さんに来ていた。
自分のお給料ではとても手が届かない高級ブランド…ではなく、割と普通のレディースショップだった。それでも私にとってはそこそこのお値段の洋服ばかりだが…)

(店内にはシックな服がたくさん並んでいて、店員さんも店の雰囲気も全体的に落ち着いた感じで少しソワソワしてしまう。
店員の一人が蘭の存在に気づくとすぐに「蘭さん、こんにちは」と声をかけてくる。どうやら馴染みの店らしい)

どーも。今日はカノジョの服一緒に選んでやって

(私…!?)
(女物の洋服屋に連れてこられた時点で薄々勘付いてはいたが、それでもやっぱり驚いてしまった)

○○の好きな服見ておいで
俺、店ん中でテキトーに時間潰して待ってるから今日一日過ごすコーデが決まったら教えて

あ、○○の着たいもので全然いいんだけど出来れば俺も好きそうな感じの服だと嬉しい

(そんなこと言われても、と戸惑う。
蘭の誕生日なのだから彼の好みに合わせるのは全然構わないが、その好みが私は分からない。
この店に連れてこられたのだからシックな洋服が好きなんだろうとは思うけど、それ以外の情報が何とも…)

(とりあえず店員さんと一緒に服を見ていってみる。
あの、彼ってパンツとスカートどっちが好きとか知ってますか…?と店員さんに尋ねると「以前ご来店されたときはパンツスタイルが好きと仰ってましたね」と返された。

なるほど。なら決定だ。
私は自分と彼両方が好きそうなパンツを選び、それに合いそうなトップスを探していく。

そして…)






おー、可愛いじゃん

(試着室から出てきた私を見て、蘭が褒めてくれた)

そのパンツいいなぁ。○○に似合ってる
そういうカッコしてるといつもよりもお姉さんに見えるよ

(いつもはお姉さんに見えてないのか…と若干落ち込んでると「今のコーデに合いそうなバッグはこれかこれかな。どっちがいい?」と蘭が見せてきた。
正直に自分の好きなほうを選ぶと「じゃあこれも含めて今試着してるの全部ちょうだい」と店員さんにカードを差し出す)

(やっぱり、と思って恐る恐る口を開く)
(…本当にいいの?今日はあなたの誕生日なのに私がプレゼントされるなんて…)

俺の誕生日なんだから俺の好きにさせてよ
それにプレゼントなら今俺も貰ってる最中だし?

(蘭はそう言って笑うけど、こっちはまだ申し訳なくて俯いてしまう)

そんな顔すんなよ。この店馴染みなんだぜ?
連れてる女に買い物中暗い顔させてたら低レベルのつまんねえ男だと思われるじゃん。俺に恥かかせないでくれよ

(店員さんからカードとさっきまで着ていた服を紙袋に入れて返される)

そんじゃ行こっか

(あっ…ありがとう!あの私、それ持つから貸して…)

恥かかせんな、っつったろぉ?
○○が持つのはその小さいバッグだけで充分

…本当はヘアメイクもしてやりたかったけど、美容院まで行ってたら流石に時間足んなそうだったから今日は諦める


(まあ、今日だけなら…)1