「じゃあ、そろそろ出ようか」
「みんな二次会行けるー?」
(竜胆のことが気がかりだった私は「すみません、私今日はこれで…」と、次の店の誘いを断った。
そうすると当然竜胆も「ならオレも」と言ってくる)
「えー、もう帰っちゃうの?」
○○がいないのにオレだけ残るのも変じゃん?
「まあそれはそうだけどぉ…」
(まだ竜胆は他の同僚と話をしてるけど、やっと帰れるという安心感にほっと胸を撫で下ろす。
幹事の人が会計を済ませ、店を出る直前…)
「私、ちょっとお手洗い行ってくる。○○ちゃん付いてきてくれる?」
(さっきまで右隣に座っていた先輩に声をかけられた。
トイレに行くのに私を指名…?と不思議に思ったが「はい、いいですよ」と二つ返事で了承して先輩について行った。
背後から幹事役の「外で待ってるぞー」と言う声が聞こえる)
(…)
「ゴメンね、ついて来てもらって」
(先輩はトイレへやってきたのに、個室に入らず手洗い場の前で私と向き合うようにして立っている。
何か話があるのだろう、と次の言葉を待っていると…彼女は少しだけ黙った後まっすぐ私を見て口を開いた)
「……○○ちゃんさ、大丈夫?」
(…? さっき先輩に心配された「顔色が悪い」ということについてだろうか)
「彼、竜胆くんだっけ?あの子本当にただの友達なの?」
(一瞬、先輩まで他の女性同僚たちと同じことを言うのかと思ったが、そうではないらしい。
彼女は深刻な顔をしている)
「こんなこと言ったら失礼なのは分かってるけど……○○ちゃん、彼に脅されたり乱暴されたりしてない?」
(えっ、と思わず声に出してしまった)
「人を見かけだけで判断するつもりはないけど、あの子の場合…なんて言うのかな。怖いんだよね。外見が派手だからとかじゃなくて…目が、すごく冷たい感じがして。
最初は信じられなかったの。あなたの知り合いだって言って飲みの席に入ってきたけど、○○ちゃんとは正反対なタイプの子だなって思ったから。
それに私、リンドウって名前どこかで…」
だ、大丈夫ですよ!あの子、すっごく優しくていつも私に良くしてくれるんです。怖いことなんて何もされてないですよ