「あ、蘭じゃぁん!それに竜胆も!」
「嘘ぉ、どうしてここにいるのー?」

(蘭さんと竜胆の真ん中にいた私を押しのけるように、急に二人の女の子が割って入ってきた。
何事!?と思って二人を見ると、どうやら兄弟の知り合いみたいで彼らの腕を取って甘えている)

「チョ〜久しぶり〜♡ねね、最近なんで連絡くれなかったの?」
「来てたなら誘ってほしかったな…会えなくて寂しかったぁ」

(私なんか最初からいなかったみたいに、女の子たちは彼らしか見ていない。
そんな二人を蘭さんも竜胆も無表情で見下ろしている)






悪いけど、俺ら今デート中なんだわ
離してくんね?

(蘭さんの腕を取っていた茶髪の子が「デート?」と言って、初めて私を視界に捕える。
竜胆が「そうだよ。邪魔だからお前ら消えろ」とキツい言葉を投げかけると、今度は竜胆に絡んでいた黒髪の子が「そんなぁ」と不満そうな声を漏らした。

…女の子たち、二人とも品定めするようにこっちを見てくるから怖くてちょっと萎縮してしまう。
やがて茶髪の子が私を見ながら「プッ」と吹き出した。黒髪の子もクスクスとおかしそうに笑っている)

「ちょっと蘭、からかうのやめてあげなよ。こんなオバサンいじめてカワイソーじゃん。ねぇ?」
「そうだよ。自分が遊びですらない、ただバカにされて楽しまれてるだけなんて知ったらこの芋女泣いちゃうじゃん」

(『おばさん』『芋女』
彼らと同年代くらいの、スタイルのいい美人から放たれた容赦のない言葉はしっかりと私の胸に刺さった。

息が詰まって、苦しくなる。)

(…あはは、彼女たちの言う通りだね。私、やっぱり二人には釣り合わないから今日はもう帰ろうかな。それじゃ…)

竜「は!?何言ってんだ、ちょっと待てよオイ!」

(小さくお辞儀して、その場から逃げるように離れる。

最後、何だか気まずくて蘭さんと竜胆の顔ちゃんと見れなかったな…)






…。

(竜胆は走り去っていく彼女を呆然とした顔で見送った。その間にも隣にいる女はすりすりと竜胆の腕に顔を寄せて甘えている)

「さ、芋おばさんはどっかいったし私たちと回ろー」
「蘭!竜胆!見てこれ、浴衣カワイくない?
ていうか二人も浴衣じゃん。やばぁ♡かっこいー♡」

(女たちがギャイギャイと甲高い声で騒ぐ。
その声を聞いているうちに、竜胆は自分の胸の辺りがスッと冷えていく感覚を覚えた。

蘭の顔を見るとバッチリ目が合う。…たぶん今の自分は兄と全く同じ表情をしてるんだろうな、と竜胆は何となく思った)

蘭「いいよ。一緒に行こうか。
でもさぁ、祭りっつーよりもっと楽しいコトしたくね?」

(人のいないところでさ、と蘭がにっこり微笑みかける。蘭のことが好きな茶髪の女はその笑顔を向けられてぽっと頬を染めた)

そうだな。あっちのほうなんかいいんじゃない?
オレらだけでコッソリ楽しも

(竜胆も黒髪の女の肩を組んで耳元で囁くと、彼女はますます赤くなった)


知らない女の子たちが近づいてくる