「兄貴……何、なんで、」

「なんでも糞もあるかよ。お前いいの? ○○さんはもう俺らが嫌で関わりたくないっつってんだぜ。つまり今日、彼女に従って大人しく写真を消してサヨナラしたら、もう一生会えないって訳だ」

 竜胆の目が見開かれる。その瞳は、暗く、絶望の色に染まっている。

「彼女に嫌われたまま、もう二度と会えなくなる。……それだったらよォ、」

 今ここで脅して、無理やりでも関係繋いだほうがマシじゃね?

 ……彼は、確かにそう言った。

「……だ……ゃ、だ、やだっっ」

「あー、ったくウルセェな。マジで怪我するよ? いいの?」

「ま、……待ってよ!! まって、それって……」

 竜胆が、震えながらぎゅっと拳を握る。

「そんなの……レイプじゃん……」

「そうだけど?」

「やだ……やだよ、オレっ……! ○○を、そんな、犯すだなんて……、はじめて好きになった……本気で惚れた女なのに、そんな……!」

「竜胆よォ」

 気だるげに振り向く。

「さっきも言ったけどお前、○○さんに一生会えなくなってもいいの? 彼女とこれから話すことも触れることもできないツマンネー人生送るつもり? ○○さんに嫌われたまま、彼女がいない生活に耐えながら生きていけんの?」

「りんど、竜胆っ! おねがい、やめてっ……!!」

「○○さんは黙ってようねー」

 包丁の先をぴたりと頬に当てられる。少し、血が出たかもしれない。

 竜胆。おねがい、蘭さんを止めて。今だったらまだ引き返せる。竜胆も蘭さんも私も、みんな、それぞれの道をーー

「竜胆、って……もう二度と呼んでもらえなくなるんだぜ」






 それを聞いた瞬間、竜胆の震えが治まった。す、と肩の力が抜けたようにも見えた。
 蘭さんが、竜胆に笑いかけて手招きする。

「ほら、こいよ。兄ちゃんと一緒にやろ。二人でやれば怖くない。だろ?」

「…………うん」

 竜胆が俯いたまま力なく答える。

 ……うそ。嘘でしょ。

「竜胆、上しっかり拘束してて」

「うん」

「やだッ!! やだ、やだゃだやだ嫌だあぁッッ!!」

「○○」

 半狂乱になって暴れる私に、ぽそ、と耳元で竜胆が呟いた。

「おとなしくしてくれないと、腕が折れる」

 ……そんなことを言われてもなお、抵抗を続けられる人がいたら教えてほしい。
 竜胆に上半身をがっちり拘束される。腕から手首にかけて思うように動かせなくなった。血の気が引いていく。指先が冷たくなっていく。
 その間に蘭さんは私の着ていた服を脱がし、乱暴に下着も剥ぎ取っていく。びり、と嫌な音がした。恐らく裂けたのだろう。
 がちがちと歯が鳴り、体も震える。
 あの日、公衆トイレで襲われかけたあの場面がフラッシュバックする。あれは竜胆と蘭さんの仕業で、最後まで犯されることはなかったけど……今日はちがう。今から始まるのは、演技じゃない。恐らく今日、私は本当に……、


梵天ルート3