（その日から、寝ても覚めてもあの女のことばかり考えてしまう
ふとした時に、彼女の顔と声を思い出す

特別、綺麗な顔立ちではなかった
スタイルが良いわけでもなさそうだったし本当にどこにでもいる普通の女に見えた

なのに何故だろうか。彼女のことが気になって仕方ない
名前は？歳は？どこに住んでいて、どんな生活を送っているのか？
好きな食べ物は、苦手なものは、交友関係は、性事情は……



はっと我に返って、竜胆は自分の手のひらを見た
今しがた出したばかりの粘ついたそれが指に絡む感触に眉をひそめ……すぐに目を見開いた）

……オレ、今、誰で何して…

（自分で自分のしたことが信じられなかった
あの女のことを考えてるうちに、いつの間にかそいつと自分がまぐわっていて、しかも女は自分の名前を呼んでいるなんて

……こっちは、女の名前すら知らないのに）



マジで、どうしちまったんだ…オレ



（背筋が、ぞっと冷えていく感覚がした）