先輩「! ○○ちゃん…」

(先輩を見かけて咄嗟に声をかけてしまった。
彼女は一瞬、私…というより私の側にいる竜胆を見て顔を引きつらせたように見えたが、こっちは彼女の隣にいる男性が気になってそっちに意識を向けてしまった。

恋人さんですか?と尋ねると「ううん、私の兄なの」と返され、軽く挨拶と自己紹介をし合う。
三人で少しの間談笑していたら、先輩のお兄さんから「その男の子たちは友達?」と質問された。

…しまった!二人のこと忘れてた!)

(そうなんです、今日は三人で来てて…と言おうとしたら、兄弟が私を押しのけるように前に出た)






蘭「どーもー。彼女がいつもお世話になってまーす」

竜「○○のトモダチでーす」

(ずいっと前に出た灰谷兄弟が先輩たちに挨拶する。
先輩のお兄さんは目を丸くして「うわー、カッコいい子たちだね。近くで見ると尚更…」と言い、それに対して二人が「どーも」「よく言われるッス」と素っ気なく返した。

先輩は…何だか居心地悪そうに俯いている。竜胆が彼女に近寄り、覗き込むように顔を近づけた)

竜「先輩さーん、コンバンワ」

先輩「……っ!」

竜「あれえ?元気ない?どうしたんスか。人混みに酔っちゃった?」

(ニヤニヤと、どこか嫌な笑みを浮かべながらそう言う竜胆に顔をしかめる先輩)

竜「この間のお礼も兼ねて何か奢りますよ。お兄サンも腹とか減ってない…」

(竜胆が先輩のお兄さんに声をかけた瞬間、先輩がお兄さんの腕を引いて「私気分悪くなっちゃった。もう行こう!」と早口で喋り始めた)

先輩「○○ちゃん、ごめん!またね!」

(えっ?あ、はい!また…)

(おい引っ張んなよ、急にどうしたんだ?とお兄さんに言われても無視して人の波をかき分けるように進んでいく先輩。

…あっという間に二人が見えなくなり、竜胆が鼻でクスッと笑った気配がしたので彼のほうを向いてみる)

竜「気分悪くなった、かぁ。まあそりゃそーだろうな」

蘭「何オマエ、あの女と知り合い?話聞いてると○○さんの職場のセンパイらしいじゃん。
この間のお礼、っつってたけどこの間っていつだよ?何があったワケ?」

(飲み会の話だよね?あのね蘭さん、実は…)

竜「いーよ。後でオレから話しとく。
せっかく三人で祭りに来てんのにオレら以外の、他人の話で盛り上がる必要ないじゃん。

あっ、○○!そろそろ時間じゃね?もう移動しとかねーとヤバくねえか?」

(ホントだ、花火の時間だね。それじゃあ移動しようか)






先輩を見つけて声を掛ける