恐る恐る蘭さんのほうに視線を向けると、彼は私の首元に顔を埋めたまま「あー……」とため息混じりの声を上げた。
「すっっっげぇ、ヨかった……」
「おっさんみたいだからやめてよ兄ちゃん」
「んだとコラ」
ようやくむくりと顔を上げた。普段あまりかかない(であろう)汗を浮かべて、長い髪が数本額に張り付いてる姿が物凄くセクシーだ。彼、これでまだ10代なんだよなぁ……。
私がぼーっと見ていると、彼は自分の髪を鬱陶しそうにかき上げてからこっちに視線を向けた。バチっと目が合う。
「ごめんね、今抜くから」
「ぁ、」
ずる……、と萎えたソレをゆっくり抜いていく。外したピンク色の避妊具の中に、とろっとした白い液体が溜まっているのが見えた。何だか恥ずかしくなってしまい顔がぼぼっと熱くなる。
彼はゴムの口を縛ってベッド脇のゴミ箱に捨てた後、ごろんっと私の隣に寝転がった。
「ふう……、あー疲れた」
「でも嫌な疲れじゃねえな」
「うん。なんつーか、満足感? 幸福感? ついにやり遂げた、みてーな感じ」
「でもオレらより○○のほうがずっと疲れてるよな。大丈夫?」
「初めてなのに男二人相手にしたんだから体への負担ハンパじゃねーだろ。○○、今日はもちろん泊まっていくだろ? 無理しないで、早いうちに休も」
「うん……ありがとう。……あの、ふたりとも気持ちよかった?」
「勿論! さっき疲れたっつったけどあと10回はヤれる! つかヤりたい!」
「オマエはイケても○○は無理だバカ」
「あ、そっか。……でも、オレたちはすげえ良かったけど、○○はイけなかった……よな?」
「初めてでイける女なんていねーだろ。AVやエロ漫画じゃあるまいし。これから回数重ねてって俺たちでイけるようにしてやろうぜ」
「あっ、でも最後のほうはあんまり痛くなかったよ!」
「ほんと? なら良かった」
蘭さんがふわりと微笑みを返してくれた。
「ていうか、名前……」
「名前? ああ、呼び捨てにしてたの気になった? ……嫌だったかな」
「ううん。……嬉しい」
「ははっ、そっか」
横になったまま体勢を変えた彼に、そっと後ろから抱きつかれる。
「俺のことも呼び捨てでいいよ。今更だけど、さん付けじゃあ余所余所しいじゃん? 恋人なのにさ」
「……こいびと」
「うん。俺たち三人、今日から恋人同士だろ?」
「や、やっぱりそうなるの、かな」
「当たり前じゃん。だって俺は○○と竜胆が好き、竜胆は俺と○○が好き、○○も竜胆と俺のことが好きだろ?こんなのもう三人で付き合うしかねーじゃん」
「……なんかさ、もーちょい他の言い方なかったの?」
竜胆が照れ臭そう頬を掻いて、自分の兄を睨む。
「何がよ」
「ゃ……、間違ってはないんだけどさぁ」
「何ブツブツ言ってんだお前」
「あ、じゃあ……蘭ちゃん……でもいい?」
「いいよ。さん付けじゃないなら何でも」
「てかもう夕方じゃん。昼メシ食いそびれた」
竜胆が伸びをし、ふう、と息をつく。
「○○、お腹空いただろ。シャワー浴びたらご飯食べに……行けそうにないか、今日は」
「家で何か取ろ」
「ならゆっくりお風呂入ってからゴハンにしよ♡ この間バラの香りの入浴剤買ったからそれ入れて一緒に入ろ。体も洗ってあげる」
「フロ沸かしてくるわ」
「りんどー。後でシーツ替えといて」
「へぇへぇ……」
蘭ちゃんが後ろから嬉しそうに頬擦りしてくる。
竜胆はぽんぽんと優しい手で私の頭を撫でてから、満足そうな顔をして部屋を出て行った。
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