「兄貴が兄貴がってガキみてーに騒ぎやがって。

……あー、そうだよ。確かに言い出しっぺは俺だよ。俺がお前を唆したんだ。全ての元凶は俺かもしれねえ。だけど、」

 ははっ、とおかしそうに笑う。

「やったのはオマエだろ? 竜胆」

「……!!」

「俺はお前唆して、計画に協力してくれる奴らを紹介しただけだ。実際にそいつらに指示して○○さん襲わせたのはテメェだろうが」

「……ち、がう……」

「違わねえだろ。それにお前、最後の最後までイヤなんてひと言も言わなかったよな?
お前は「○○に嫌われたくない」だとか「もしバレたら」だとか、そういうことしか言ってなかったじゃねーか。自分の心配ばっかでよぉ、彼女のことなんてほとんど考えてなかったくせによく言うぜ」

「違う!! オレは……ッ」

「○○さーん。今の話聞いて気付いてると思うけどコイツな、アンタのストーカーしてたの。初めて会った日からずーっとアンタのことが忘れられねえっつってこっそり家まで行ったり隠し撮りしたり、その写真でオナッたりしてたんだぜ? ヤバくね? マジキモいよなコイツ。頭おかし、」

 それ以上は続かなかった。竜胆が蘭さんをまた殴ったから。
 ぽた……、と蘭さんの鼻血が床に落ちる。






「……なぁ、兄貴。教えてくれよ。

なんで今になってバラした? 兄貴だって○○と仲良かっただろ。オレが嫉妬するほど……、兄貴も○○を好きだったじゃねえか。
お互いの家に行き来するほどの関係になって、三人で色んなとこ行って、夏も冬も一緒に過ごして……もうずいぶん経つのにさ。
オレだけじゃない。兄貴だって共犯なんだ。この事がバレたら二人とも○○から嫌われるって分かっていなかったはずないよな? なのに……それなのにどうして今更……ッ

……なぁ、兄貴。どうしてなんだよ……?」

 竜胆が泣きながら、声を絞り出すように問いかける。
 蘭さんは何も答えないでずっと俯いてたけど、やがてゆっくりと顔を上げた。

「俺は、お前らが好きだった。どっちか片方なんて選べない。弟のお前も、初めて本気で惚れた○○さんも、俺にとっては両方かけがえのない存在だ。
三人でつるんで、バカみてえに下らない話してる時が一番幸せだったよ。お前らが俺の前でこれ見よがしにイチャついたりさ、呆れたり妬いたりした時もあったけど……正直な話、そんなお前らを側で見てるのも好きだった。心地良かったんだ、あの空気が。

……どっちかだけじゃダメなんだ。俺は、俺と竜胆と○○さんの三人でずっと一緒にいたかった。死ぬまで、一緒に。お前らといられればそれで良かったんだ。他に何もいらなかった」


ルート分岐4