(自分のスペースだけ書いてから再び竜胆に渡した)
ん、オッケ。じゃあ後はオレだな
(そう呟いて『夫になる人』の欄にペンを走らせる。
最初に色紙にサインをしたときよりも丁寧に、ゆっくりと名前や生年月日、住所などを書いていく。
不意に、ぽたっ…と雫が落ちて文字が滲む)
…
(見ると竜胆が、表情は変わらないまま静かに涙を流していた)
…ゴメン。なんか、これ見てたら泣けてきちまった
ただの紙なのにな
オレの隣にお前の名前が書いてあるだけの、紙なのに
(困ったように笑って、自分の袖で涙を拭う)
この証人て欄は兄貴に書いてもらえばいいか
…よし。じゃあこんなもんだろ
(そう言って婚姻届を丁寧に折り畳み、懐にしまう竜胆)
これは時期が来るまでオレが預かっとくわ
もし来なくても、絶対に捨てない。一生大切に持っておく
……オレのお守り