刹那、何かが飛び散った…血だ。
大量の血が自分を赤く染めていた…

殺された?自分は死んでしまったのか?


「う…うがああぁぁっっ!!!痛てぇ…痛てぇよぉぉ!俺の手がぁぁ!!」

しかし、それが自分のではなく、両手を切り落とされ悲鳴を上げている鬼の血だと気付いた。



うるさいな…どうせ元に戻せるでしょ


声の主は少年だった、一見するとまだ幼さの残る。

「滅」の字の刻まれた隊服は少々大きすぎるのかブカブカであり、全体的に線の細い印象すらある。

長い黒髪の先は、瞳の色と同様に綺麗な翡翠色をしていた。 

しかしその手にはこの世で太陽に代わって鬼を滅する事が出来る唯一の武器、日輪刀を携えている。



彼はこちらを一瞥すると再び鬼に視線を戻した。
気が付けば先刻切り落とされたはずの両手は既に元に戻っていた。

「お、お前…よくもこの俺に不意打ちを食らわせてくれたな」

………。

ふーん…その小さいガキに両手を切り落とされて泣き喚いてたのは誰だったっけ…

な…!?このクソガキ!
たかがションベン臭ぇクソガキが!たかが弱いだけの人間が!
たかが…!?





うん、君は"たかが弱いだけの鬼"だよ


鬼の渾身の罵倒はそれを言い終える前に遮られた。

頸を少年に切られ、必死に言葉を紡いでいた口を顔面ごと地面へ叩き落とされたからだ。

続く
その時だった