(皆、誰かと話したり遊んだり、めいめいに過ごしているけれど、私はウサミに呼び出されたため、砂浜に向かっていた)
(初めはどうなることかと思ったけれど、振り返ってみるとあっという間の日々だったなぁ……)
(明日には返してもらえる話だけど、どんな手段になるんだろうか)
(飛行機はエンジンのないハリボテだし……そもそも来た時も教室の壁が倒れたら南国だったし、帰りもウサミの魔法とかなのかもしれない)
(否定しきれないおかしさに肩を揺らすのと同時、足が砂を踏んだ)
(探す必要もないくらいに目立つ、白いヌイグルミが1つ)
(一体誰がデザインしたんだろう、ホント)●●さん、ご足労いただきありがとうございまちゅ。
(ぺこりと頭を下げれば、手にした杖もしゃらりと揺れる)
(なんだか普段より硬い言葉使いだなぁと思いながら、話を促した)貴女によって予め入力されていた、記憶データの復元をこれから行いまちゅ。
(……?)
(言っていることの意味が、よくわからなかった)
(自分が死ぬ可能性を考えていただとか、そこから復元する方法を残していただとか、このリアクションも“私”が想定した通りだとか、云々)
(ウサミが言っていることがわからない。わからないから体が動かない、頭が働かない)さぁ、いっきまちゅよー!
(そんな私を置いて、ウサミは私の周りをくるくる回り、その杖からは次々に虹色の帯が生み出されていく)
(待ってと言っても聞いてくれない、止まってくれない)
(どんどんと増えていくそれは私の視界を覆って、包んで、混ざって──)
(──気がつけば、私は白のなかを落ちていっていた)