(その後のことは、よく覚えていない)
(ただひたすらに逃げて、今の隠れ家にどうにか転がり込むと、そのタイミングを待っていたかのように電話がかかってきた)『あ、もしもしセンパーイ? だーいすきな左右田センパイとは無事そーしそーあいになれましたー?
えー、殺されそうになったって? きゃー、こわーい!!
でも……仕方ないですよね……私の洗脳によって、私と同じ思考になってるんですから……
大好きな人であるほど、殺すことによる絶望を味わいたくて堪らなくなってしまうんです……』
(一方的に捲し立てる声は、江ノ島盾子)
(一瞬は切ってやろうかとも思ったけれど、できる限りの情報を引き出そうと携帯を握りしめた)『あ、もしかして洗脳を解こうとか思っちゃっているのぉー? そんなの無理無理。無理無駄無謀の3Mだよぉ。そんなのドMの域だよぉ。
だって、あれは人情で解けるような簡単なものじゃないんだよ? うぷぷ、ざーんねーんでーしーたーっ!
でもでも、それも面白いかもね? あんたに取れる手はいくつあるのかなー、そもそもいつまで命が持つのかなー?
あははっ、定期的に観察しといてあげる! それじゃ、頑張ってねー!』
(結局こちらに喋らせることもないまま、電話は切れる)
(解けるかわからない洗脳。下手をすれば殺されてしまうかもしれない)
(けれど、左右田くんは私を「好き」だと言ってくれた。洗脳により思考が歪められているとはいえ、その気持ちは本物かもしれない!)
(だから、だから私は)
(意図的な“仲間ハズレ”だろうと、どうにかして左右田くんを元に戻してみせると決意した)→